山口地方裁判所下関支部 昭和43年(ワ)369号 判決
原告
羽生恵三
外一名
代理人
於保睦
外一名
被告
株式会社末永商店
代理人
長谷川一郎
被告
富田隆弘
第一、主文
一、被告らは各自原告羽生恵三に対し、八二八、五〇七円および内金七七八、五〇七円に対する昭和四四年一月一四日から、残金五〇、〇〇〇円に対する昭和四五年四月三日から、各支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二、被告らは各自原告羽生叶恵に対し、三、六四八、四九六円および内金三、四四八、四九六円に対する昭和四四年一月一四日から、残金二〇〇、〇〇〇円に対する昭和四五年四月三日から、各支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三、被告富田隆弘は原告羽生恵三に対し、三三二、〇一〇円およびこれに対する昭和四四年一月一四日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四、原告らのその余の各請求を棄却する。
五、原告らと被告ら間に生じた訴訟費用はこれを四分し、その一を原告らの負担、その余を被告らの連帯負担とする。
六、この判決一ないし三項は、かりに執行することがである。
第二、当事者の求めた裁判
一、原告ら
(1)被告らは各自、
原告恵三に対し一、六七四、六九六円、
原告叶恵に対し五、四五九、九二四円、および右各金員に対する昭和四四年一月一四日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は被告らの負担とする。
(3)(1)につき仮執行の宣言。
二、三<略>
第三、争いのない事実
傷害・物損交通事故発生
とき 昭和四三年七月二八日午後六時四〇分ごろ(小雨もよう)
ところ 下関市大坪本町三三―一〇番地先路上(国道一九一号線、コンクリート舗装、下り勾配)
加害車 普通四輪トラック(山一す九八九〇号)
運転者 訴外海井敏明(酒気帯び無免許運転)
被害車 軽四輪乗用自動車(ダイハツL三七・八山め五一五〇号)
運転者 原告恵三
受傷者 原告恵三(昭和九年三月二八日生)、同叶恵(昭和四〇年一月一七日生)
態様 筋川方面から武久町方向へ進行中の加害車と、武久町方面から筋川方向へ進行中の被害車が衝突し、ために原告恵三および被害車同乗中の原告叶恵が受傷し、被害車が破損した。
第四、争点
一、被告らの責任原因
(原告らの主張)
(1)被告会社(民法七〇九条、七一五条、自賠法三条)
(イ)被告会社は下関魚市場の一、二位を争う大規模な魚仲買業者であり、右魚市場で大量の魚を買い付け、遠く九州、中国地方等に売りさばいている。
(ロ)被告会社の所有する右魚運搬用車両は一六台にのぼり、本件加害車は右業務用車両中の一台である。
(ハ)被告会社の従業員運転手は、右業種の性質から、日常真夜中の午前零時三〇分までに出勤し、魚を右車両で各地に運搬し、だいたい午後二時から五時ごろまでの間に退勤していた。
(ニ)右のように、出勤時間が深夜で市内バス・電車などはないので、被告会社は従業員運転手のうち、その住所またはその近くに駐車できる土地がある者には、その固定担当運転車両を持ち帰り、出退勤に使用することを認めていた。
(ホ)前記一六台の業務用車両の総括管理責任者の下で、各従業員運転手は固定担当運転車両の日常整備、掃除、仕業点検、保管等管理の任を有していた。
(ヘ)本件加害車の右固定担当運転手は、右(ハ)、(ニ)、(ホ)の事実に該当する訴外西村哲雄であり、同人の本件事故当時の住所は下関市八幡町にあつた。
(ト)右事故の際加害車の運転をしていた前記海井は、右西村の以前からの友人であり、被告富田とも友達付合いをしていたものであるが、被告富田と西村とは一面識もなかつた。
(以上の事実は被告会社の認めるところである)
(チ)西村と海井はともに食事をし、その際海井はビール大びん二本を飲み、西村の運転する加害車に乗り、海井の案内でその友人たる被告富田の家を訪ねた。
(リ)そして、西村、海井および被告富田の三人で酒を飲もうということになり、西村を残して被告富田が加害車に海井を乗せて酒店に酒を買いに行つたが、その帰途海井は酒気を帯び、かつ無免許で加害車を運転中、操縦を誤りスリップし、道路中央線を越えて被害車に衝突した。
(ヌ)よつて、被告会社は加害車管理上の過失をおかし、ために本件事故の発生をみたものというべきである。
(2)被告富田(民法七〇九条、七一九条)
被告富田は、無免許の海井が酒に酔つていることを知りながら、加害車の助手席で海井の運転を幇助し、海井は前記(リ)の過失により本件事故を起こした。
(被告会社の主張)
(1)被告会社に加害車管理上の過失なく、かつ、被告会社は本件事故当時、加害車の運行供用者たる地位になかつた。
(イ)被告会社では、車両の管理、運転につき常に厳重な注意を払い、特に車両課長がその責めに任じ、従業員の指導監督にあたつていた。
(ロ)被告会社は担当運転手に対し、深夜出勤用として車両の持ち帰りを許していたが、飲酒運転はもとより、私用乗用や他人への無断貸与などは固く禁じていた。
(ハ)被告会社は毎週日曜日は休業するが、本件事故当日はたまたま日曜日であり、同会社の業務のため車両を運行する必要はまつたくなかつた。しかるに、加害車の担当運転手西村哲雄は当日、平素の厳禁を無視して私用のため無断で車を乗り出した。
(ニ)西村は当日、偶然海井および平川某と出合い食事をともにしたが、海井からその友人である被告富田方(当時下関市武久町)まで送つてくれと頼まれ、加害車を運転して同被告方までこれを送り、同家前路上に停車して海井の用談の終わるのを平川とともに運転台で待つていた。したがつて、海井と被告富田間に酒を飲む話がなされた事情はまつたく知らなかつた。
(ホ)そのうち、海井と被告富田が車まで来て、近くの酒屋まで行くので車を貸してくれと頼まれた。西村は、海井が運転免許を有していないことを承知していたが、被告富田が右免許を持つており同被告が運転するとのことであり、かつ、同人は全然飲酒していなかつたので、やむをえず平素の禁止をおかし、平川とともに車を降りて加害車を被告富田に貸与した。被告富田はこれを運転して同所を出たので、西村としては、その後海井が無断で運転するがごときことは、まつたく予想もしていなかつた。
(ヘ)しかるに、海井は酒屋からの帰途、被告富田の制止を聞き入れずむりやり加害車を運転し、本件事故を招来したものである。
(ト)以上のとおり、被告会社と被告富田および海井との間には雇用、親族、知人等なんらの関係もなく、彼らが加害車を運転することなどまつたく予期しえなかつたことで、本件は被告会社の事業の執行にいささかの関連もない運行中の事故である。西村が前記のとおり被告富田の運転を許容したとしても、海井の運転を許したものでも予想したものでもない。なお、西村は従前、海井に対し車の運転を許したようなことはまつたくない。
よつて、被告会社には本件事故につき、民法七〇九条、七一五条所定の責任はない。
(チ)海井の前記運転は無断運転、それもいわゆる泥棒運転に等しいものであるから、被告会社は自賠法三条の運行供用者にも該当しない。
(2)加害車には構造上の欠陥・機能の障害はなかつた。
(被告富田の主張)
被告富田は、海井が無免許で飲酒しているにもかかわらず勝手に加害車を運転しようとしたので、危険に思いこれを制止したが、同人はこれを聞き入れず運転した。
二、原告らの損害
<前略>
(ロ)逸失利益 二、八五六、七三九円
(A)原告叶恵には左記後遺障害がある。
1自賠法施行令別表六級二号「そしやく、または言語の機能にいちじるしい障害を残すもの」に該当する障害。
2右別表七級一二号「女子の外貌にいちじるしい醜状を残すもの」に該当する障害。
右1、2を具体的に述べると、顔面打撲症、右下腿挫創、口唇挫創、下顎骨々折の傷害を受け、開口障害、そしやく障害、言語障害、顔貌の変形がある。開口は約一横指で咬合状態は過蓋咬合である。下顎の歯列弓が約二ミリメートル後方に移動しているために、臼竜部の咬合は不十分で、しかも舌房が小さくなり、舌の運動が制限され、言語(構音)が十分でない。X線所見では、右側関節突起は内側に直角に骨折しており、右側隅角部から上行枝中央を通る骨折が認められる。顔貌は左右各隅部に約三センチメートルの手術痕と頤部に陥凹が認められる。
(B)以上の後遺障害は、つぎのように労働能力の低下をもたらす。
1俳優、テレビアナウンサーなど、容貌、発声等を不可欠の要素とする職業に就けない。
2父は中学校教師であるから、原告叶恵が教職に就きうる学歴と資格を持つ蓋然性があることは明白であるが、その教科の範囲は限定され、発音が正確であることを要する音楽、英語、国語は専攻困難であり、全科目を教える建前の小学校教師になることも困難である。
3民間会社の秘書、電話交換手などにも制約がある。
4その他の就職一般にも種々の制約を受けること明白である。
(C)右労働能力低下の割合についての公的な基準は、労働基準法施行規則別表第二身体障害等級表および労働基準局通達(昭和三二年七月二日基発五五一号労災保険法二〇条の規定の解釈について)別表労働能力喪失表であり、これによると、前記六級の労働能力喪失率は、六七パーセントである。
第五、証拠<略>
第六、争点に対する判断
一被告らの責任原因
(一)被告会社(自賠法三条)
原告らは、被告会社に対し民法七〇九条、七一五条所定の賠償責任を追及するが、被告会社が本件事故につきかかる責任を負担すると認めるに足りる証拠はない。
そこで進んで、被告会社が右事故につき自賠法三条所定の賠償責任を負うと認められるかどうかにつき判断するに、同条が自動車による人身事故につき被害者の保護を徹底するためいわゆる実質的無過失責任主義を採用したのは、自動車の運行がある程度不可避的に事故発生の危険を伴うものであることからして、自己のために自動車を運行の用に供する者は、通常その運行による利益を享受しうる地位にある反面の義務として、自動車の運行自体に包含される抽象的一般的危険を負担すべく、もしこの危険が具体化して事故による損害が発生した場合は、この者に賠償責任を負わしめるのが社会観念上妥当であり、また公平の観念にも合致するとのいわゆる危険責任・報償責任の思想にもとづくものと解せられ、この趣旨よりすれば、同条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、抽象的・一般的に自動車の運行を支配し利益を享受しうる地位にある者を指称し、したがつて、通常この地位にあると認められる自動車所有者は、たといその自動車が他人により運転されても、その運行が所有者の右支配および利益を完全に排除し、もつぱらその他人の支配および利益の下になされたという特段の事情(たとえば泥棒運転)が認められない限りは、なお同条に定める責任主体たる地位を失わないと解するのが相当であるから、かかる立場に立つて被告会社の責任を考えることとする。
まず、……被告会社は本件加害車の所有者として、抽象的一般的に同車の運行を支配し利益を享受しうる地位にある者と認められ、加害車の自宅持ち帰り等その運転および保管をある程度雇用運転手西村哲雄に委ねていた以上、西村が自宅に持ち帰つた加害車を休日(日曜日)に私用のため運転したとしても、そのことだけでは、その運行が被告会社の加害車に対する右支配(利益はともかく)を完全に排除し、もつぱら西村の支配および利益の下になされたという特段の事情ありとはいえず、他に、西村の右私用運転の開始により被告社会が自賠法三条の責任主体たる地位を失つたと認めるに足りる証拠はない。
問題は、被告富田および海井が加害車を運転した点であるが、海井が西村および被告富田の以前からの友人であつた(ただし、西村と被告富田は一面識もなかつた)ことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、
(イ)西村と海井は本件事故当日午後五時ごろ、ほか一名とともに食事をしたのち、西村が運転する加害車に海井が同乗し、その案内で被告富田の寮(下関市武久町所在)を訪ねた。
(ロ)そして、西村、海井および被告富田の三人で酒を飲もうということになり、被告富田および海井が西村の承諾を得て加害車を借り、被告富田がこれを運転し海井を同乗させて、下関市上新地まで酒を買いに行つた。
(ハ)その帰途は海井が加害車を運転したが、同人は無免許であつたため、被告富田が助手席にすわり、海井に対しサイドブレーキやハンドル操作などにつき種々運転上の注意を与えながら進行中、本件事故が発生した。
……右認定の事実によると、被告富田および海井が西村から加害車を借り受けたのは、海井と西村との友人関係にもとづくものであり、かつ、被告富田および海井が前記上新地の酒店において酒を購入して来る間の短時間に限られていたし、また、海井が加害車を運転するについては、被告富田が助手席にあつて種々運転上の注意を与えていたのであるから、被告会社が主張するように、西村は被告富田のみが加害車を運転するものと信じ海井がこれを運転するとは全然思つていなかつたとしても、右認定の事実から判断すると、海井の運転開始により被告会社の加害車に対す運行支配が完全に排除されたとは、いまだ認めがたいといわなければならない。
とすると、海井の加害車運転中も、被告会社は自賠法三条に定める責任主体たる地位を失つてはおらず、その間に本件事故が発生した以上、同条ただし書の全免責事由がない限り、右事故により原告らに生じた後記人的損害の賠償責任を免れないというべきところ、全証拠によるも右免責事由は認められない(海井が無過失でなかつた点は後記のとおり)。
(二) 被告富田(民法七〇九条、七一九条)
まず、<証拠>によると、海井は道路左側を時速約五〇キロメートルで加害車を運転進行中、当時路面が雨のためにぬれて滑走しやすい状態になつていたので、あらかじめできる限り減速して安全を確認しながら進行し、急制動するようなことのないように努めるべき注意義務があるのに、右速度のまま漫然進行を継続したうえ、折りから反対車道の中寄りを直進して来た被害車を約七〇メートル前方に発見し、運転未熟のためあわてて急制動した重大な過失により、自車を滑走させて反対車道に突進させ、本件衝突事故を起こしたことが認められる。
つぎに、<証拠>によると、被告富田は前記上新地の酒店まで加害車を運転して行き、助手席に海井を残して下車し酒を購入して車に戻つたが、その間に海井が運転席に入り込み、これを運転させて欲しいと頼むので、同人が無免許で酒気を帯びており車両の運転は危険であることを知りながら強く制止することなくこれに応じ、みずからは助手席にあつて同人に対し種々運転上の注意を与えながら進行中、前記のような事故が発生したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
とすると、被告富田は直接の加害者たる海井と共同不法行為者の関係にあるから、本件事故により原告らに生じた後記全損害の賠償責任を免れない。
二原告らの損害
(一)原告恵三の損害 合計一、一六〇、五一七円
(1)物損(原告恵三所有の被害車修理代金)三三二、〇一〇円
<証拠略>
(2)傷害損
(イ)治療費
(A)病院支払金(下関厚生病院後記治療費)六九、七〇七円
<証拠略>
(B)入院雑費(後記二四日間)七、二〇〇円
経験則により、一日三〇〇円の割合をもつて相当額と認める。
(C)通院交通費(タクシー五日間(一、六〇〇円)
<証拠略>
(ロ)慰藉料
(A)傷害治療中のもの二五〇、〇〇〇円
右算定につき特記すべき事実は左のとおり。
1頭部外傷二型、胸部打撲傷、右耳介部・手背部・肘部挫創、前歯三本折損(上二、下一)。
2昭和四三年七月二八日から一〇月一七日まで治療し治癒(下関厚生病院入院二四日、通院二一日)。
3<略>
<証拠略>
(B)後遺障害によるもの 四〇〇、〇〇〇円
右算定につき特記すべき事実は左のとおり。
1前歯上二本は抜髄および根部切除後補綴し、下一本は補綴により歯冠修復(自賠法施行令別表一四級二号該当)。
2<略>
<証拠略>
(3)弁護士費用
(イ)手数料 五〇、〇〇〇円
(ロ)謝金 五〇、〇〇〇円
原告恵三本人尋問の結果によると、原告恵三は、同原告代理人との間で、本件訴訟委任にもとづく報酬等として、山口県弁護士会報酬規定の定める金員を支払う旨の契約を右委任時になしたことが認められるけれども、本件訴訟の経過、認容額等に照らすと、右金員のうち被告らに対し賠償を請求しうるのは、前記金額をもつて相当と認められる(なお、(ロ)の謝金の支払い時期につき特約がなされたとは認められないので、その性質上本判決言渡日をもつて右履行期と認める)。
(二)原告叶恵の損害 合計三、六四八、四九六円
(1)傷害損
(イ)治療費
(A)病院支払金(下関厚生病院後記治療費中昭和四三年一一月六日までの分)八九、一九〇円
<証拠略>
(B)入院雑費(後記三四日間)一〇、二〇〇円、
(C)通院交通費(タクシー一三日間、バス七日間)四、四七五円
<証拠略>
(D)付添看護料五三、〇〇〇円
経験則により、入通院を通じ一日あたり平均一、〇〇〇円と認める……。
(ロ)逸失利益(ただし労働能力低下による財産的損害)一、四九一、六三一円
原告叶恵主張(A)ないし(C)のほか、つぎのとおり。
原告叶恵の家庭環境等から判断すると同女が本件事故にあわなければ、少なくとも高等学校卒業程度の教養を身につけ、遅くとも二五才に達するまでに結婚したであろうと推認される。右の場合、原告叶恵が結婚の前後を通じ平均的女性として長期間継続的に稼働し有形的収益を得ることができたかどうかは、特に結婚後主婦として家事労働に従事する女性が少なくないことからして、疑問といわなければならない。したがつて、特段の事情の証明のない本件では、原告叶恵につき前記労働能力低下による有形的収益喪失(逸失利益)の損害を一八才から六三才まで継続的に認めることはできない。
しかしながら、稼働可能年齢に達した女性は、稼働による有形的収益を得ない場合でも、家事労働に従事するのが通常であるから、原告叶恵は前記後遺障害のため低下した労働能力の補充がなければ、将来平均的女性として稼働または家事労働に従事しえなくなつたものというべく、右補充を要する労働能力に相当する財産的損害(有形的収益の減少、家事補助者の使用等種々の形態が考えられる)を将来にわたり受けることが明白である。
そこで、当裁判所は、原告叶恵に対し、逸失利益よりかむしろかかる意味における財産的損害の賠償請求を認め、事故当時三才の同女が将来稼働または家事労働に従事しうる一八才(高校卒業程度)の女子平均賃金を基準として右労能力を評価し、一八才から六三才まで四五年間における右財産的損害を算定するのが相当であると考える。しかるところ、昭和四三年度の右女子平均賃金は、原告叶恵の主張する昭和四二年度女子労働者平均賃金月額二一、七〇〇円を下らない(ただし、臨時給与を含む。昭和四三年賃金構造基本統計調査報告八二ページ以下)から、左記算式により右損害額は一、四九一、六三一円となる。
(算式)
21,700×12×(18,9292−10,3796)×0.67
<証拠略>
付言するに、中間利息控除法としてのホフマン法は、貨幣資本が一定期間単利法で利殖されることを前提として、現在から一定期間後の貨幣資本の現価を求める方法であるが、現代においては貨幣資本は六か月または一年を一期とする複利で利殖されることが最も普通なのである(たとえば銀行預金、郵便貯金)から、単利割引法たるホフマン法はその前提を欠き、これを採用する合理性に乏しい(特に本件のように中間利息控除期間が長い場合はいちじるしい不合理を生ずる)。そこで、複利割引法たるライプニッツ法を採用したもので、右算式括弧内の数値は、年利五分の場合の六〇年と一五年の各ライプニッツ係数である(この点に関しては、ジュリスト三六三号五六ページ以下、判例タイムズ二一二号一三〇ページ以下参照)。
(ハ)慰藉料
(A)傷害治療中のもの二〇〇、〇〇〇円
右算定につき特記すべき事実は左のとおり。
1顔面打撲症、右下腿挫創、口唇挫創、下顎骨々折。
2昭和四三年七月二八日から一一月六日まで治療しほぼ治癒(下関厚生病院入院三四日、通院一九日)。
3<略>
<証拠略>
(B)後遺障害によるもの 一、五〇〇、〇〇〇円
<証拠略>
(1)弁護士費用
(イ)手数料 一〇〇、〇〇〇円
(ロ)謝金 二〇〇、〇〇〇円
原告恵三の場合と同趣旨の理由による。
第七、結論
一、被告らは不真正連帯債務の関係で、原告恵三に対し、同原告の前記損害中物損を除いた八二八、五〇七円および内金七七八、五〇七円に対する本件訴状送達翌日たる昭和四四年一月一四日から、残金五〇、〇〇〇円(弁護士費用中謝金)に対する本判決言渡日たる昭和四五年四月三日から、各支払いずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
二、被告らは不真正連帯債務の関係で、原告叶恵に対し、同原告の前記損害三、六四八、四九六円および内金三、四四八、四九六円に対する右昭和四四年一月一四日から、残金二〇〇、〇〇〇円(弁護士費用中謝金)に対する右昭和四五年四月三日から、各支払いずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
三、被告富田は原告恵三に対し、前記物損三三二、〇一〇円およびこれに対する右昭和四四年一月一四日から支払いずみに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
四、よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。(谷水央)